2015年3月

 

主宰句

 

牡丹雪いぶりがつこを噛みをれば

 

 きさらぎのかりそめならぬ稚の爪

 

 立春の闇にうすくれなゐの豚

 

 淡雪の南京町に火薬の香

 

 紅梅をもはらに詠みて足らずをり

 

 胸の雪払うて入りし雛の店

 

 雪間草の横の徳用マッチ箱

 白樺の寄生ほよの影ある雪間かな

 

 永き日の搭乗口に舞妓ゐる

 

 車座のひと揺らぎせし雲雀東風


巻頭15句

     山尾玉藻推薦

 

梟や父が小半酒余したる          山田美恵子

 

榾火ごとと動き人の輪動きけり       山本 耀子

 

枯れきつて藤棚の下つつがなし       大山 文子

 

雪雲の海へ展けし離宮道          深澤  鱶

 

十二月水に後れて歩きをり         城  孝子

 

風花や舟の障子に声のして         蘭定かず子

 

青空は安心のいろ冬木の芽         小林 成子

 

跳ねてみよ掌の上の雪兎          大内 和憲

 

漱石忌コーヒー豆は夜の色         涼野 海音

 

雑踏の中風花を誰か言ふ          西村 節子

 

真二つの海鼠ゆつくり縮みけり       田中 文治

 

涸池の底を走れる風の音          坂口夫佐子

 

雪かぶる柿に青空ありにけり        井上 淳子

 

日のあたりそむ初霜の松林         松井 倫子

 

風花のふれたるものの色に消ゆ       前田  忍