山尾玉藻 自選30句


冬支度午後より椎の下に来て

 

虹消えてきれいな馬糞ありにけり

 

遠足の列恐竜の骨の下

 

鴨たちとひとつ闇なる枕かな

 

ザリガニの音のバケツの過ぎにけり

 

初めての老眼鏡に守宮ゐる

 

鮟鱇の肝の四角の揺れてをり

 

雛あられちよつと揺すりて飾りけり

 

陽炎をよく噛んでゐる羊かな

 

観音に会ひたくて蜷すすみをり

 

六月の畳に拾ふ樒の葉

 

夏の色なり宝塚大劇場

 

瓢箪が夜遊びおぼえはじめけり

 

蕗むいていち日むいてゐるやうな

 

葬つて来し手ばかりの焚火かな

 

鴨鍋のさめて男のつまらなき

 

ざざ虫の佃煮つひに届きたる

 

裏白のふんはりとありダンボール

 

俎に置き直されし海鼠なり

 

男つひに跼みこんだる大桜

 

大きいやうな小さいやうな草の餅

 

両の掌の桃のかたちに桃受くる

 

白息の出会ひたくなき人なりし

 

夜焚火に染まる赤子を渡されし

 

魚籠のぞき今日の暑さの始まりぬ

 

どの雲となく水となく端午かな

 

出雲よりもどりて衣更へにけり

 

とのぐもる草刈に音出できたる

 

大阪に飽かず蝙蝠にも飽かず

 

初夢の湯殿に会ひし比奈夫翁