2015.4月

 

主宰句

 

雪の隙水のこぼるる荷を下ろし

 

 火柱の裏へまはりし野焼守

 

 男山の方へ夕野火逸れゆけり

 

 をんな傘つづいて開く末黒かな

 

 桜漬ひらくを母が急かせけり

 

 絞られしままの雑巾地虫出づ

 

水取のきのふに果てしなごり風

 

日かげりて踏み跡旧りしげんげん野

 

とびきりの朝空なりし種おろす

 

夕冷えの草踏みゐたる春の服


巻頭15

    山尾玉藻推薦


元朝の黙をかはせし梅茶かな        坂口夫佐子


はらからに晩年早し七日粥         深澤  鱶


ぬくもつてきたる眠さの雪兎        山田美恵子


掃初の嵩なきものに通り雨         蘭定かず子


福笹の乗り来し窓辺日当れる        大山 文子


さをしかの不意にふり向く恵方道      林  範昭

 

夕づつに明日を恃む海鼠桶         西村 節子


水陰の飛び石わたる淑気かな        小林 成子


松過ぎの女らに据ゑ大土鍋         山本 燿子


おしろいを薄く左義長見に行けり      今澤 淑子


やはらかく米研いでゐる寒暮かな      奥田 順子


西陣の路地に空あり喧嘩独楽        河﨑 尚子


凍滝の裂けしろがねにし吹きをり      大内 和憲


ビニールに湿る食パン火事遠し       藤田 素子


初旅のカロリーメイト割りにけり      涼野 海音